生産年齢人口が減少する中、特に建設業界は深刻な人材不足が続いています。厳しい人材不足が続く建設業界において、各社は女性やシニア、海外出身人材を活用するなど、人材確保を進めていますが、いまだに課題解消できているとは言い難い状況が続いています。
このような中、まずは建設業での「女性活用」にフォーカスをあてて多方面から調査していきたいと思います。
第1回となる今回は、業界別に女性活用度を調査・ランキング化することで、他業種と比較しながら建設業における女性活用度を見ていきます。
なお、本レポートで、主要13業界を対象に、以下の指標を元に独自に女性活用度合いを偏差値化しています。
調査結果が、建設業各社の人材採用・定着・活用における戦略策定の参考となれば幸いです。
本調査では、以下の4つを指標としてランキング化しています。
■本レポートにおける4つの指標
① 女性比率: 全就業者に対して女性就業者が占める比率
② 女性管理職比率: 課長相当職以上(役員含む)に占める女性の比率
③ 平均勤続年数の男女比: 平均勤続年数における男女比
④ 年間平均給与額の男女比: 年間平均給与額の男女比
図表① 業種別の女性就業者が占める比率
ここでは、総務省の「労働力調査」から、就業者に占める女性の比率を業種別に算出し比較しています。
図表①にある通り、建設業の女性比率は17.1%となり、13業種の中で最も低い比率でした。同じく、女性比率が低いイメージがある運輸・郵便業(21.9%)や、製造業(30.0%)などよりも低く、建設業では女性の活用が進んでいないと推測されます。なお、最も女性比率が高いのは医療・福祉の75.4%、次いで宿泊・飲食サービス業が62.0%、生活関連サービス業が59.5%となりました。
【図表① 業種別の女性就業者が占める比率】
出典:総務省「労働力調査」2021年平均より作成
図表② 業種別の女性管理職比率
続いて、厚生労働省の「令和2年度雇用均等基本調査」を基に、女性の管理職比率(全就業に対する役員を含む課長相当職以上の女性比率)を業種別に比較したものが図表②です。まず業種計の平均値は12.4%で、特記して医療・福祉が49.0%と高い結果となりました。
建設業は9.2%で、建設業を含む5業種(製造業、情報通信業、運輸業・郵便業、学術研究/専門・技術サービス)が10%を下回りました。
このことから、建設業にかかわらず、多くの業種で女性の管理職登用が進んでいない状況がわかります。
※女性管理職比率=課長相当職以上(役員含む)に占める女性の比率
【図表② 業種別の女性管理職比率】
出典:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」より作成
図表③平均勤続年数の男女比
次に、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本調査」から、男性の平均勤続年数に対する女性の比率を業種別に算出しました。この比率が大きいと勤続年数の男女比が小さく、女性が比較的長く勤務している業界と言えます。またパーセンテージが低くなるにつれ、女性の勤続年数が男性と比較して短く、女性の早期退職が目立つ業種であると言えます。
図表③の通り、勤続年数の男女比が一番小さいのが、医療・福祉で、94.7%でした。続いて建設業が79.7%と続き、業種別でみると、建設業は比較的女性の勤続年数が長いと言えます。
【図表③ 平均勤続年数の男女比】
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本調査」より作成
図表④ 年間平均給与額の男女比
女性の能力を積極的に活用して重要な仕事を任せているかを測る指標として、年間平均給与額について、業種別に男女比を調べました。
図表④は、厚生労働省の「令和3年賃金構造基本調査」を基に、男女別に年間平均給与額を算出し、男女比としてまとめたものです。
業種計での女性の給与額は、男性の70.6%となり、もっとも男女差が少ないのは情報通信サービス業の77.0%、男性と比較して女性の給与額が最も低い業種は、56.6%の金融・保険業となりました。
建設業では、女性の年間平均給与額は男性の71.7%であり、全業種計の70.6%を僅か上回ったことから、建設業における年間給与額の男女格差はほぼ平均並みと考えられます。
【図表④ 年間平均給与額の男女比】
出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本調査」より作成
図表⑤ 業種別の女性活用度指標の偏差値化によるランキング
業種別に、「全就業者に対する女性比率」、「女性管理職比率」、「平均勤続年数の男女比」、「年間平均給与額の男女比」の4つの指標から女性活用度合いを分析した結果から、各指標を独自に偏差値化して、業種別にランキングしたのが図表⑤です。
このランキングから、もっとも女性の活用が進んでいる業種は、医療・福祉となり、次いで宿泊・飲食サービス業と生活関連サービス業が同率で2位となりました。
建設業は9位で、あまり女性活用が進んでいない業種という評価結果となりました。特に女性就業者比率が最下位となっており、それに伴って女性の管理職比率も低くなっています。一方、平均勤続年数の男女比は2位になるなど、長く働き続ける女性が多いことがわかりました。
また、特筆すべきは、ランキング上位の3業種では、女性管理職比率、勤続年数の男女比がともに高い評価であることが挙げられます。女性就業者比率が高くなることにより、女性が活躍するための様々な制度が整備され、 その結果として管理職となる女性が増え、男女の勤続年数格差も小さくなる、という好循環が生まれていると推測されます。
建設業をはじめ、女性の活用が進んでいない業種においては、まずは積極的に女性を採用し、女性就業者を増やすことが、女性が活躍できる組織作りに重要になると考えられます。
【図表⑤ 業種別の女性活用度指標の偏差値化によるランキング】
出典:ヒューマンリソシアが独自試算