IT分野の卒業者数、地域トップはロシア、STEM関連分野が多い北ヨーロッパ諸国
世界92カ国のIT技術者調査のIT関連分野の卒業者編、前回の西・南ヨーロッパ編に続き、IT分野で注目国が多い東・北ヨーロッパについてご紹介します。
ここでは、IT技術者の大きな人材供給源となる情報通信技術関連を専攻した卒業者、およびAI(人工知能)やビッグデータ解析分野で重要となる科学・数学・統計学を専攻したSTEM関連分野の卒業者にフォーカスをあて、調査結果をご報告しまします。
なお、本連載では、経済協力開発機構(OECD)や国際連合教育科学文化機関(UNESCO)などの統計データを元に分析しています。
※本連載では、下記東ヨーロッパ10カ国、北ヨーロッパ8カ国を調査しています(※略称、順不同)
東ヨーロッパ:ロシア、ポーランド、ウクライナ、ルーマニア、チェコ、ハンガリー、ベラルーシ、ブルガリア、スロバキア、モルドバ
北ヨーロッパ:スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、ラトビア、リトアニア、エストニア、アイスランド
※情報通信技術分野専攻の卒業者数については、OECDおよびUNESCOの統計データより、短大等を含む大学(学士、修士、博士)の卒業者数を引用しています
※科学・数学・統計学専攻の卒業者数については、OECDおよびUNESCOの統計データより、短大等を含む大学(学士、修士、博士)のNatural sciences, mathematics and statistics専攻の卒業者数としています
まずは図表①にて、東ヨーロッパ10カ国における情報通信技術関連を専攻した卒業者数を見ていきたいと思います。
この地域の卒業者数トップは、ロシアの9万2,742人で、10万人に迫る勢いとなりました。次いでポーランドの1万5,214人、ウクライナの1万735人と続きました。
データを確認できたのは東ヨーロッパ9カ国で、合計は約14万人となりました。
<出典および情報年(カッコ内)>
※ロシア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア:OECD. Stat(全て2016年)
※ブルガリア(2016年)、ルーマニア(2016年)、ウクライナ(2017年)、ベラルーシュ(2017年):UNESCOstat
※短大等を含む大学(学士、修士、博士)の情報通信技術専攻の卒業者数
続いて、各国のIT技術者の需給バランスを見る参考として、現役IT技術者に対するIT卒業者数の割合を見ていきたいと思います。この数値が高いほど、新たにIT技術者となりえる卒業者が多く輩出されており、IT技術者の供給力が高いと推測できます。なお、各国のIT技術者数については、連載の「第4回:世界各国のIT技術者数~東・北ヨーロッパ編~」で調査した結果を引用しています。
最もこの割合が高いのはロシアの10.5%となりました。卒業者全てがIT技術者に就くと仮定すると、年10%、IT技術者が増える計算となります。
続いて、ウクライナが5.8%、ポーランドが5.2%、ルーマニアが4.7%と続きました。
ここまでの4カ国はすべて日本の3.1%を上回っており、東ヨーロッパ各国ではIT技術者の育成に注力している国が多いと推測できます。
※出典および情報年は、図表①と同じ
次に、IT分野の卒業者数の増加率を、時系列でデータが取得できた直近の前年比にて算出した図表③で見ていきたいと思います。
これによると、地域で最も卒業者が増えているのはハンガリーで、81.7%も増加しています。次いでロシアが13.0%となりました。
ロシアはIT技術者数に対する卒業者の割合が高く、かつ卒業者の増加率も高いことから、IT 技術者の育成に熱心だと言えます。
一方、ポーランド、ウクライナ、ルーマニア、チェコ、ブルガリアの5カ国は、卒業者数が減少傾向となりました。
※出典および情報年は、図表①と同じ
今後、AI(artificial intelligence:人工知能)やビッグデータの解析等において重要になるSTEM関連分野について、科学・数学・統計学などを専攻した卒業者で見ていきたいと思います。
図表④によると、地域で最も多いのがロシアの4万8,548人、次いでポーランドで2万77人、ウクライナが1万2,085人となりました。
なお、データを確認できた東ヨーロッパ9カ国の合計では10万3,694人となり、10万2,303人であったイギリスとほぼ同じ人数となりました。
※出典および情報年は、図表①と同じ
※短大等を含む大学(学士、修士、博士)のNatural sciences, mathematics and statistics専攻の卒業者数
続いて、科学・数学・統計学を専攻した卒業者数の増加率を、時系列でデータが取得できた直近の前年比にて算出した図表⑤にて見ていきたいと思います。
増加率が最も高いのはロシアの21.3%で、次いでウクライナの3.9%となりました。
ロシアは、IT分野の卒業者と同様、STEM関連分野の卒業者も多く、かつ増加率も高い結果となりました。
一方、ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、スロバキアの4カ国では、卒業者は減少しています。
※出典および情報年は、図表④と同じ
続いて、IT分野で注目を集める国が多い北ヨーロッパについて、まずは情報通信技術関連を専攻した卒業者数を見ていきたいと思います。
図表⑥によると、3,958人のフィンランドが最も多く、次いで3,865人のデンマーク、2,914人のスウェーデンが続きました。
データが確認できた北ヨーロッパ7カ国の合計は、1万4,328人となりました。
※出典および情報年(カッコ内):OECD. Stat(全て2016年)
※短大等を含む大学(学士、修士、博士)の情報通信技術専攻の卒業者数
続いて、各国のIT技術者の需給バランスを見る参考として、現役IT技術者に対するIT卒業者数の割合を見ていきたいと思います。この数値が高いほど、新たにIT技術者となりえる卒業者が多く輩出されており、IT技術者の供給力が高いと推測できます。なお、各国のIT技術者数については、連載の「第4回:世界各国のIT技術者数~東・北ヨーロッパ編~」で調査した結果を引用しています。
図表⑦によると、最も割合が高いのはデンマークの4.4%で、次いでフィンランドの4.3%となりました。
続いて3位となったのが、世界で最もIT技術者が増えているラトビア(※参照「92カ国をデータで見るITエンジニアレポートvol.1」)で3.6%となりました。
この上位3カ国は日本の3.1%を上回っています。
一方、卒業者数が3番目に多かったスウェーデンは、1.5%と微増にとどまりました。
※出典および情報年は、図表⑥と同じ
次に、情報通信技術関連を専攻した卒業者数の増加率を、時系列でデータが取得できた直近の前年比にて算出した図表⑧を見ていきたいと思います。
北ヨーロッパで最も増加率が高かったのは、IT技術者の割合が高い国として世界3位にランクインしたエストニア(※参照1)で、26.4%増加しているという結果でした。次いで同じく同7位のデンマークで19.1%、同2位のスウェーデンが5.7%で続きました。
データを確認できた7カ国すべての国で卒業者数が増加しており、北ヨーロッパ諸国でのIT分野の人気の高さが伺えます。
なお、デンマークは、現役IT技術者数に対するIT卒業者の割合が最も高く、卒業者の増加率も高い結果となりました。
※出典および情報年は、図表⑥と同じ
次に、今後AI(人工知能)やビッグデータの解析等において重要になる科学・数学・統計学を専攻したSTEM関連分野の卒業者数について、図表⑨にて見ていきたいと思います。
これによると、デンマークが4,399人で最も多く、次いでスウェーデンが3,560人、フィンランドが2,676人、ノルウェーが2,269人となりました。
なお、データを確認できた北ヨーロッパ7カ国の合計は1万5,375人となり、フィンランド、ラトビアを除く5カ国では、IT分野の卒業者数を上回りました。
※出典および情報年は、図表⑥と同じ
※短大等を含む大学(学士、修士、博士)のNatural sciences, mathematics and statistics専攻の卒業者数
続いて科学・数学・統計学などSTEM関連分野の卒業者数を、時系列でデータが取得できた直近の前年比にて算出した図表⑩で見ていきます。
STEM関連分野の卒業者数の増加率が最も高いのは、デンマークの44.7%で、卒業者が年1.5倍近く伸びているという結果となりました。続いて、5.0%のスウェーデンとなりました。
デンマークは卒業者数が最も多く、さらに増加率も最も高い結果となりました。IT分野のみならず、STEM関連分野の教育も盛んだと言えます。
一方、フィンランド、ノルウェー、ラトビア、リトアニア、エストニアの5カ国は卒業者が減少している結果となりました。
※出典および情報年は、図表⑨と同じ
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