第1回「日本における外国人労働者の現状について」
第2回「ITエンジニア不足の現状について」
第1回:世界各国のIT技術者数~アジア・オセアニア編~
ここまで、第1回は日本で急激に増加している外国人労働者について、第2回では拡大しているIT産業とITエンジニア不足について、統計データの推移をみてきました。第3回となる今回は、日本で働く外国人のうち、ITエンジニアに注目して、その推移を調べていきたいと思います。
情報通信業に従事している外国人労働者数の推移をまとめたものが、図表①です。東日本大震災の翌年である2012年に微減した以外は上昇が続き、2008年の約1.8万人から2018年には5.7万人となり、対2008年比319.6%と約3倍に増えています。
次に、情報通信業における外国人労働者の比率を見てみると、図②にように、2008年の0.9%から2018年には2.6%に上昇しています。全産業における外国人労働者比率は2.2%(参照:第1回「急激に増加する外国人労働者」)ですので、他の産業に比べ、情報通信業での外国人活用は進んでいると言えます。
これを国籍別に表したものがと図表③「情報通信業における国籍別外国人労働者の比率」です。2014年以来、中国人労働者が約半数を占めていますが、その比率は年々低下しています。一方、ベトナム人労働者の比率が2014年の3.4%から2018年には6.3%へと上昇しています。また、その他の国の比率も12.4%から15.8%に上昇しており外国人労働者の国籍が多様化していることが推測されます。
次に、外国人労働者の中でもITエンジニアが含まれる「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で情報通信業において就業している人の推移を見ると図表④になります。2015年の約2.5万人から2018年には約4万人に増えており、2015年比は159%です。※「技術・人文知識・国際業務の在留資格」とは、会社で働くいわゆるホワイトカラーに与えられる在留資格であり、エンジニア以外にも財務、マーケティング、貿易等の専門的業務に従事する人も含まれます。
では、情報通信業で働く海外Iエンジニア数を、統計データから推測してみたいと思います。「技術・人文知識・国際業務の在留資格」は、平成27年(2015年)4月に改正入管法の施行により導入された在留資格です。それ以前は、「技術」と「人文知識・国際業務」の2つに分かれていました。そこで、「技術」と「人文知識・国際業務」別の統計データが存在する2009年から2011年の3年間について、情報通信業における外国人労働者数を見ていきます。図表⑤「技術」「人文知識・国際業務」別の情報通信業における外国人労働者数からわかるように、各年ともに約78%が「技術」です。
そこで、2015年以降も「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の就業者の78%が技術職であると仮定して、情報通信業に従事する外国人ITエンジニア数の推計値を示したものが、図表⑥「情報通信業における外国人エンジニア数と割合の推計表」となります。これにより、外国人ITエンジニア数は2015年の約2万人から2018年には約3.1万人に増加し、外国人ITエンジニア比率は2.0%から2.9%に上昇していると推計されます。
連載の第1回目で見たように、日本における外国人労働者数は2008年の約49万人から2018年には約146万人となり、就業者数に占める外国人労働者の比率は0.8%から2.2%にまで上昇しています。日本においては外国人労働者への依存率は大きく高まっています。
また外国人労働者の中で、いわゆるホワイトカラーとして働く人の在留資格である「技術・人文知識・国際業務の在留資格」で就業している人は2008年の約6万人から2017年には約21万人となり、約3.5倍に増加しています。ここからは、飲食店のアルバイト等の単純な職業だけでなく、高度に専門的な職業においても外国人への依存が高まっていることが分かります。
第2回目の連載では、日本においてはIT産業の市場規模の拡大を背景にIT人材へのニーズが高まり、労働市場ではITエンジニアの有効求人倍率は上昇を続け、人材を採用することが非常に難しくなってきていることを指摘しました。
そして、第3回目の連載である今回は、情報通信業で就業する外国人ITエンジニア数を推計し、2015年の約2万人から2018年には約3.1万人に増加、外国人ITエンジニア比率は2.0%から2.9%に上昇していると試算しました。ITエンジニア不足を背景に海外ITエンジニアが増加していると考えます。
政府も、2015年4月から高度人材に特化した在留資格「高度専門職」を新設して、2020年末までには10,000人の高度専門職人材の認定を目指すなど、高度外国人材の活用に積極的に取り組んできました。
このような高度外国人材活用を政策的に支援する流れの中、IT関連企業各社においても海外ITエンジニアの本格的活用に向けて準備を進めることが重要になると考えられます。
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