シニア活用に向けての社会的動向と、高齢化が進む建設業の実態

2023/03/02
シニア活用に向けての社会的動向と、高齢化が進む建設業の実態

日本の65歳以上の高齢者人口は、3,627万人と、前年に比べ6万人増加して過去最多となりました(総務省統計局2022年9月15日現在推計)。
一方、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)は前年から61万人減少して7,392万人となり、1995年の8,726万人をピークに減少傾向が続いています。このように少子高齢化が急速に進む中、65歳以上の就業者数は2011年の571万人から2021年には909万人に増加しており(総務省「労働力調査」)、労働市場におけるシニア層の重みは増しています。

このような状況の中、建設業においては就業者の高齢化が他業種以上に進んでいることに加えて、厳しい人手不足が続いており、シニア人材活用の重要性は特に高いと考えられます。

本レポートでは、日本における少子高齢化進展の実態、シニア活用に向けての政策動向、建設業におけるシニア人材活用の現状等について分析するとともに、今後のシニア人材活用の更なる推進に向けてのポイントを、2回に分けてご紹介します。

※後編は、こちら 「建設業におけるシニア人材活用の現状と、シニア人材を活用するためのポイント
URL:https://corporate.resocia.jp/ja/info/investigation/senior03 

 

少子高齢化進展の実態 


日本の生産年齢人口は、2021年からの約20年間で、1,377万人が減少

社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2017年/中位推計)」によると、日本の生産年齢人口は2021年の7,355万人から減少し続け2030年には6,875万人(対2021年比で479.6万人減)、2040年には5,978万人(同1,377万人減)になると推測されており、生産年齢人口は今後20年間で大幅に減少します(図表1)。一方、65歳以上が全人口に占める割合は2021年の29.1%から2030年には31.2%、2040年には35.3%(対2021年比6.2ポイント上昇)になると推測されています。このことにより、労働市場におけるシニア層の重要性は一層高まると推測されます。

senior1

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年中位推計)より作成

 

就業率が現状維持であれば2040年には就業者数は1,069万人減少

日本の生産年齢人口予測を元に、2021年の就業率(生産年齢が77.7%、65歳以上が25.1%)が今後も続くと仮定し将来シミュレーションを行うと(「現状維持シナリオ」)、2040年の就業者数は約5,627万人となり、対2021年比で1,069万人減少します(図表2)。また生産年齢の就業率は現状維持とし、65歳以上の就業率が上昇(毎年0.2%上昇)すると仮定した「65歳以上の就業率上昇シナリオ」で将来シミュレーションをおこなうと、2040年の就業者数は約5,776万人で対2021年比の減少幅は920万人に縮小します。今後の労働力不足を解消するためには、65歳以上の就業率を少しでも上昇させシニア人材の活用を促進するとともに、女性や外国人など多様な労働力の活用、さらには生産性の向上が重要になると考えられます。

senior2

出典:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年中位推計)を基に試算して作成

 

建設業における高齢化の現状


建設業就業者のうち65歳以上が占める割合は16.9%、全産業平均の13.6%を上回る

このように生産年齢人口の減少と高齢化が進んでいくなか、建設業においては就業者の高齢化が特に深刻な状況にあります。総務省の「労働力調査(2022 年平均)」で建設業の就業者数を年齢層別にみると、最も多いのが65歳以上で81万人となっています(図表3)。65歳以上の就業者が占める割合を業種別にみると建設業は16.9%で全産業平均の13.6%を上回り、不動産業・物品賃貸業(27.1%)、他に分類されないサービス業(22.7%)、生活関連サービス業・娯楽業(19.2%)に次いで4番目に高くなっています(図表4)。このように、建設業は他業種と比較しても就業者の高齢化が進展していることがわかります。つまり、建設業は、若者就業者を確保する必要がある一方、より若者就業者の採用が厳しくなる将来に向けて、いま就業しているシニア人材をいかに活用していくか、が重要な課題になると考えられます。

senior3

出典:総務省「労働力調査」より作成

senior4

出典:総務省「労働力調査」より作成 (※サービス業(他に分類されないもの)

 

2021年4月施行「高年齢者雇用安定法」の改正内容


65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務とされた

このようにシニア人材の活用が求められる中、高年齢者が活躍できる環境整備を図る法律である「高年齢者雇用安定法」が、70歳までの就業機会の確保を努力義務として加えた内容に改正され、2021年4月から施行されています。その改正内容のポイントを示すと図表⑤のようになり、65歳から70歳までの就業機会を確保するために、「70歳までの定年の引上げ」、「定年制の廃止」、「継続雇用制度の導入」といった雇用による措置及び、「業務委託契約の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」といった雇用によらない措置等を講じることが努力義務とされています。「70歳までの就業機会の確保措置」は努力義務となるため、現時点では罰則は科せられません。しかしながら、努力を怠った場合、行政指導を受ける可能性や将来的には義務化されることも考えられます。また前述のように、シニア人材をより積極的に活用していくためには、70歳までの就業確保に向け、就業規則や評価制度等の諸制度の整備を進めることが必要になると考えられます。

図表5

出典:厚生労働省(高年齢者雇用安定法改正の概要)より作成

*詳細は厚生労働省のパンフレット(https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf)をご参照ください

 

65歳までの高年齢者雇用確保措置は70.6%の企業で継続雇用制度の導入で対応

厚生労働省の「令和4年高年齢者雇用状況等報告」によると、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業の割合は99.9%で、ほぼすべての企業で何らかの措置が実施されています。措置の内容をみると、継続雇用制度を導入している企業が70.6%、定年の引き上げを実施した企業が25.5%、や定年制を廃止したのは3.9%となりました。政府が「生涯現役社会の実現」を目指すなか、多くの企業は、継続雇用制度(「再雇用制度」または「勤続延長制度」)の導入のみが主な選択士となっていることがわかります(図表6)。

senior6

出典:厚生労働省「令和4年高年齢者雇用状況等報告」より作成

 

建設業における70歳までの就業確保措置を実施済み企業の割合は全業種の中で最も高い

続いて、70歳までの就業確保措置においては、実施済みの企業は27.9%となっています。この割合を産業別にみると、建設業は37.9%の企業が実施済みで、全産業合計の27.9%を上回り、すべての業種の中で最も高くなっており、建設業においては70歳までの就業確保に向けての対応を他の業種よりもいち早く実施していることが分かります(図表7)。

senior7

※サービス業(他に分類されないもの)

出典:厚生労働省「令和4年高年齢者雇用状況等報告」より作成

 

まとめ


少子高齢化が急速に進む中、シニア人材の活用は将来的な労働力確保のための喫緊の課題であり、特に建設業は高齢化が他業種以上に進んでいることから、今後の厳しい人手不足を乗り切るためにはシニア人材の活用は必須だと考えられます。また、「高年齢者雇用安定法」が改正されて70歳までの就業機会の確保が努力義務となる等、政策的にもシニア人材の活用が後押しされています。建設業においては70歳までの就業確保に向けての対応を実施している企業の割合が全業種の中で最も高く、シニア人材活用に積極的に取り組んでいることが分かります。

 


シニア人材活用を進めたい企業のご担当者様

人材不足問題への解決策として「シニア人材活用」を考える

https://resocia.jp/special/senior/

 

 

お問い合わせはこちら

合わせて読みたい

建設業におけるシニア人材活用の現状と、シニア人材を活用するためのポイント

【2030年人材不足問題】どう備える?シニア人材の活用ポイント

女性活躍に関するレポート② 建設業界編  職種別の女性活用度