建設業におけるシニア人材活用の現状と、シニア人材を活用するためのポイント

2023/03/03
建設業におけるシニア人材活用の現状と、シニア人材を活用するためのポイント

前回は、日本の高齢化の現状および建設業におけるシニア人材活用への取り組み状況について解説しました。
本レポートでは、建設業におけるシニア人材活用の現状について分析するとともに、シニア人材の活用に向けたポイントをご紹介します。
(前回記事URL:https://corporate.resocia.jp/ja/info/investigation/senior02

 

建設業におけるシニア人材活用の現状


建設業におけるシニア人材活用の現状を評価するために、60歳以上の離職率(離職率が低いほど活用できていると定義)、60歳以上の正規社員比率(正規社員比率が高いほど活用できていると定義)、60歳以上の給与減額幅(減額幅が小さいほど活用できていると定義)の3つを指標を設定し、それぞれについてデータで現状を確認します。


建設業における60歳以上の離職率は、主要産業の中で最も低い

厚生労働省の「雇用動向調査(2021年)」により60歳以上の離職率を業種別にみると、6064歳の離職率は建設業では9.3%と全産業平均の19.0%を下回っています。65歳以上についても12.0%で全産業平均の20.3%を下回っており、いずれも主要業種の中で最も低い結果となりました(図表1)。このことから、建設業においては定年を迎えても再雇用等で同じ会社にとどまって働き続けるシニアが多く、建設業各社は、シニア人材を労働力として確保するという側面では成功していると考えられます。

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※離職率=(当該年齢の離職者数÷当該年齢の常用雇用者数)×100
※サービス業(他に分類されないもの
出典:厚生労働省「雇用動向調査(2021)」より作成

 

建設業では、65歳を超えても「正規社員」として働く人が多い

「労働力調査(2022年平均)」から65歳以上の正規社員比率を業種別にみると、建設業の65歳以上の正規社員比率は57.5%で全産業平均の23.6%を大幅に上回り、主要業種の中でも高い比率となりました(図表2)。建設業では65歳を超えても雇用形態を変えることなく正規社員として能力を発揮しているシニア人材が多いことが推測されます。

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出典:総務省「労働力調査」より作成

 

60歳以上でも年間給与額の減少幅は小さい

厚生労働省の「賃金構造基本調査(2021年)」60歳以上の年間給与額を5559歳の年間給与額と比較してみると、建設業では6064歳の対5559歳比は80.6%であり、全産業平均の75.0%を上回りました(図表3)。65歳~69歳では66.3%に低下しますが、全産業の62.3%、製造業の53.4%を上回っています。このことより、建設業では定年・再雇用の後でも比較的給与の減額幅は小さく、今までと同じレベルに近い貢献をしているシニア人材が多いことが推測されます。ただし、教育・学習支援業、医療・福祉業と比較すると、特に65歳~69歳については、建設業の減少幅は大きく、70歳定年時代を迎えるにあたっては、さらなる処遇の改善が必要になると考えられます。

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出典:厚生労働省「賃金構造基本調査」より作成

 

評価結果のまとめ

建設業においては、60歳以上の離職率は低く、60歳を超えても正規社員で働く人の割合が多いことがわかります。また、60歳以上における年間給与額の減額幅も小さく、比較的シニア人材の活用に成功していると言えます。この背景には、建設業では高齢化が特に進んでいるということに加えて、建設技術者と建設技能工を中心に厳しい人手不足の状況が続いていることがあると考えられます。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2022年平均の建設技術者の有効求人倍率は6.48倍で全職種の中で最も高く、建設技能工は5.58倍と、建設技術者に次いで高い状態です。このような状況の中で、建設業各社ではシニア層の社員を好条件で処遇し、自社に引き留めることに注力しているのではないかと考えられます。

 

 

シニア人材を活用するためのポイント


シニア人材の能力を最大限に活用するためには、シニア人材が就業に対してどのようなニーズをもっているのかを把握して、ニーズを踏まえた人事施策を策定することが重要になります。ここでは、日本労働組合総連合会がおこなった「高齢者雇用に関する調査2020」の結果から、60歳以上の働き方に関するニーズを探って、シニア人材活用のためのポイントを考えます。


仕事の成果を適切に評価し処遇する人事制度を整備

同調査から、60歳以上で現在の仕事に満足していると答えた人の割合をみると、働き方については70.3%、労働時間は73.8%、労働日数は73.3%、仕事内容は71.5%が満足と答えていますが、賃金について満足している人は44.0%にとどまっています(図表4)。このように60歳以上で働く人の半数以上が現状の賃金に満足していない背景には、定年再雇用後に多くの企業で一律に賃金が低下する現状があるのではないかと思われます。シニア人材の能力を最大限に発揮してもらうためには、今までの経験やスキルを活かせる仕事を任せるだけではなく、その成果を適切に評価して給与や処遇に反映させることができる人事制度を整備することが重要になると考えられます。

senior03_4出典:日本労働組合総連合会の「高齢者雇用に関する調査2020」より作成

 

個人の希望に合わせて多様な就労条件を選べるようにする

次に、65歳を過ぎて働く場合に適切と考える週間就業日数及び1日あたり就業時間を60歳以上の現状と比較してみると、60歳以上の現状の就業日数は54.5%の人が週5日であるが、65歳以上で適切と考えるのは週5日が32.1%、週3日が30.1%、週4日が30.0%、となり、ばらつきが大きくなっています(図表5)。1日当たりの就業時間についても、60歳以上の現状では1日当たり8時間が42.0%と半数近くを占めていますが、65歳以上で適切と考えるのは5時間が28.9%、8時間が17.6%、4時間が16.2%と意見が割れています(図表6)。このように、65歳以上での働き方に対する希望は個人差が大きくなっており、一人一人の希望に合わせて働くことができる多様な就労条件を提供することが重要になると考えられます。

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senior03_6出典:図表56ともに日本労働組合総連合会の「高齢者雇用に関する調査2020」より作成

 

健康管理及び建設現場での安全対策を徹底する

65歳以降も働く場合に心配なことについてみると、「自身の体力が持つか」が65.5%で最も高く、次いで、「自身の健康を維持できるか」が57.5%となっており、体力面・健康面での不安が大きいことが分かります(図表7)。建設業では建設技術者や建設技能工といった建設現場での業務が多い人材も多く、体力の低下や健康面の不安が業務上の事故に結び付く危険性が高くなるので、シニア人材に対する健康管理及び工事現場での安全対策が特に重要になると考えられます。

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出典:日本労働組合総連合会の「高齢者雇用に関する調査2020」より作成

 

まとめ


建設業においては、高齢化が特に進んでいること及び厳しい人手不足の状況にあることを背景に、シニア人材の活用は比較的進んでいると考えられます。今後については、「シニア層についても仕事の成果を適切に評価し処遇する人事制度を整備」「個人の希望に合わせて多様な就労条件を選べるようにする」「健康管理及び建設現場での安全対策を徹底する」、というシニア活用のための3つのポイントを踏まえて人事の諸制度を整備して的確に運用するが、シニア人材の能力をさらに引き出し、活躍できる環境づくりにつながると考えられます。

 


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