働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症の拡大により、オフィスへ出社せずに自宅などで働く「テレワーク(リモートワーク)」という働き方が普及しつつあります。
企業がテレワークを導入することで、社員は空き時間を有効活用できるようになるため、ワークライフバランスの実現につながります。
さらに、通勤によるストレスが軽減され、自身が最も働きやすい環境で仕事に取り組めるため、生産性や意欲の向上も期待できるでしょう。
それでは、テレワークを導入することで企業にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。デメリットを解消する方法と共に、詳しく解説します。
テレワークは、「tele(離れた場所)」と「work(働く)」を組み合わせた造語のことで、ICT(情報通信技術)を活用し、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を指します。
普段オフィスで行っているさまざまな業務を、社員の自宅・コワーキングスペース・サテライトオフィスなどで行うのが一般的なテレワークの形態です。
テレワークは、単なる働き方改革の一環ではなく、生産年齢人口の減少による労働力不足を解消する手段として国の成長戦略にも掲げられています。
近年、一般企業でテレワークの導入が急速に進んでいる背景を詳しくご紹介します。
将来的な人手不足に備えられる
少子高齢化問題に悩まされる日本では、将来的に15〜65歳までの労働者が減少すると予測されています。
労働人口の減少によって採用の難易度が上がっている中、テレワークの導入は企業に『働きやすさ』をもたらし、採用力を高められる施策の一つと考えられています。
例えば、「育児をしながら働く」「家族との時間を大切にしながら働く」「Wワークで働く」という多様な働き方の選択肢を与えることで、企業に必要な労働力を確保・維持しやすくなります。
理想的なワークライフバランスのとれた働き方は、労働者のニーズを満たし、離職防止にも効果的です。
テレワークを積極的に導入して雇用の門戸を広げることで、将来的な人材不足に備えることができます。
この数年でテレワークが急速に普及したのは、新型コロナウイルス感染症の拡大が大きく影響しています。
Withコロナ時代となり、オフィスでのウイルス感染拡大を避けるために、通勤やオフィスへの出社を回避し、テレワークを継続している企業は多く見受けられます。
万が一、オフィスの特定の部署でクラスターが発生してしまった場合、その部署での業務の生産性は著しく低下し、事業への悪影響を避けられません。
働く場所を柔軟的に決められるテレワークは、新型コロナウイルスに限らず、ウイルス感染症対策の有効な手段となります。
テレワークを支援する助成金・補助金制度が設けられていることも、企業での導入が加速した大きな要因です。
例えば、厚生労働省が設けた「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、テレワークに必要な機器の導入費の一部免除や、テレワークを実施する労働者の数に応じた資金の援助を受けられます。
▶人材確保等支援助成金(テレワークコース)の要件・概要|厚生労働省
経済産業省が設けた「IT導入補助金」では、テレワークを導入する際のソフトウェアやデジタルデバイスの購入代金に対する補助金を受けられます。
他にも、各地方自治体で独自の補助金制度が設けられており、テレワーク導入の大きな後押しとなっています。
はじめに、企業がテレワークを導入する5つのメリットを紹介します。
経済産業省によれば、2050年に日本の人口は約1億人まで減少する見込みです。今後は高齢者の増加幅は落ち着くものの、15~64歳までの労働世代と呼ばれる人が占める割合は加速度的に減少していきます。
画像出典元:経済産業省「2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」
労働人口の減少に比例して優秀な人材も減少していくことが予測されるため、企業は今後さらに人材を確保するのが難しくなっていきます。
しかし、企業がテレワークを導入していれば、まずオフィスに出勤する機会が少なくなりますので就業場所や居住場所の制約がなくなります。
従来までのスタイルでは、オフィスの近くに住んでいる方のみが採用ターゲットでしたが、テレワークであれば住んでいる場所は関係ありませんので、スキルを持ちながら通勤が困難だった人材を即戦力として雇用するチャンスが広がります。
極論をいえば、テレワークを導入していれば日本だけではなく海外に住んでいる方でも採用できるため、多様な人材を確保することが可能です。
今よりも優秀な人材を確保することが難しくなる今後の社会情勢を見据えたうえで、企業にとってテレワークを推進することは大きなメリットになるでしょう。
テレワークは社員自身が働きやすい環境で仕事ができるため、生産性や意欲の向上に繋がるというメリットもあります。
意欲が上がる要因の1つとしては、オフィスに出社していた時に感じていたいくつかの負担を感じなくて済むという点が挙げられます。
その1つとして、「通勤」が挙げられます。
テレワークなら自宅で仕事ができるため、毎日の通勤時間を削減でき、電車通勤の場合は、満員電車に乗るストレスからも解放することができます。これまでの通勤時間を家事や業務、自己啓発など別の時間に充てることが可能になり、時間を有効に使うことができます。
また、海が好きな人は海の近くで仕事ができるなど、自分の人生を豊かにするための選択肢が拡がることで、仕事に対するモチベーションも自然と上がっていきます。
実際に、厚生労働省がテレワーク実施後の社員へ行ったアンケートによれば、約9割の方が「生産性が向上した・変わらない」と回答しています。
電話、来客、同僚との会話などでデスクワークが中断する機会が減ったり、ワークライフバランスが充実することで、社員の意識改革においてプラスの効果が見られています。
前述したように日本は少子高齢化社会であり、今後はさらに労働世代の占める割合が少なくなります。そのような社会情勢の中では、優秀な人材を確保するだけではなく、今働いている社員を離職させないための取り組みも不可欠です。
厚生労働省が令和3年8月31日に発表した「雇用動向調査結果の概況」によると、男女共に最も多い離職理由は「個人的理由」となります。
主な個人的理由の男女別の内訳は下記の通りです。
男性は介護や看護、女性は出産や育児で退職せざるを得ないケースが多いです。
しかし、企業がテレワークを導入していれば、社員は在宅での仕事の合間に介護や育児の時間を取ることができるので、今まではやむを得ない事情で退職せざるを得なかった社員が離職する必要はなくなります。
テレワークという働き方が確立されていれば、ライフイベントの変化で退職せざるを得なかった社員を引き留めることができ、働き続けたいというニーズに応えることができます。
非常時も事業を継続できるテレワークを導入していれば、予期せぬ災害時や感染症の広まりといった緊急時でも、事業を継続させることができます。
たとえば、2020年に日本で拡大した新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、多くの企業が突然の事態により事業の継続に支障をきたしました。
日本は地震、洪水、豪雨などの自然災害が多い国です。普段からテレワークの環境が整っていれば、状況を元に判断した上で、業務を遂行できます。
テレワークを導入していれば、予期せぬ災害時や感染症の広まりといった緊急時でも、事業を継続させることができます。
たとえば、2020年に日本で拡大した新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、多くの企業が突然の事態により事業の継続に支障をきたしました。
日本は地震、洪水、豪雨などの自然災害が多い国です。普段からテレワークの環境が整っていれば、状況を元に判断した上で、業務を遂行できます。
テレワークは、企業のBCP対策(事業継続計画)としても有効です。
1つのオフィスに社員と機能を集中させるのではなく、テレワークでリスクを分散させて業務を遂行できる体制を整えていれば、非常時も滞りなく事業を継続できます。
いついかなる非常事態が発生しても、事業を継続できる計画は立てておいたほうがよいでしょう。
オフィスの家賃
水道代・電気代
通勤手当
社員一人ひとりに椅子と机を用意しなければいけないオフィスでは、働く人の数に合わせた規模のオフィスを借りる必要があります。
しかし、テレワークを導入してオフィスへ出社する社員の数が減少すれば、手狭でも賃料の安いオフィスへ引っ越すことができ、郊外や地方へ移転することも検討できます。
当然ながら、オフィスへ出社する社員の数が減るため通勤手当も不要です。また、オフィスの照明や空調の使用時間も減るため、光熱費の削減にも繋がります。
続いては、企業がテレワークを導入する3つのデメリットを紹介します。
自己管理能力に優れている社員はテレワークでも業務を滞りなく遂行できますが、目を離すと業務に集中できないなどの社員は向いているとはいえません。
テレワークでは、オフィス勤務とは違い上長の目が届かない場所で社員は仕事をします。そのため、自己管理能力が低い社員はテレワークにより労働時間が長くなるケースもあります。
対面でのコミュニケーションが前提ではないテレワークでは、小さなことでもすぐに確認できるオフィス勤務とは異なる方法を取り入れなければ円滑に仕事を進められません。
また、共に働く仲間が近くにいない環境は社員に孤独感をもたらすことがあります。
Web会議などを活用しながら、離れて働いていても定期的に顔を見てコミュニケーションを図れる機会を作るようにしてください。
使用するパソコンのウイルス感染
デバイスの紛失や盗難
第三者から画面を見られる
安全性の低いフリーWi-Fiを利用してしまう
カフェやコワーキングスペースなど、働く場所を自宅に限定せず選べるケースでは、その自由度の高さがセキュリティリスクの懸念点ともいえます。
会社との社外秘の情報や顧客の個人情報など、企業では絶対に漏洩させてはいけないさまざまな情報があります。
必ずセキュリティ対策はクリアにする、仕事をする場所のルールを定めるなど、セキュリティに関わる対策やテレワーク勤務についてのガイドラインを策定したほうがよいでしょう。
前述したようにテレワークには、労働実態の管理が難しい、社員同士のコミュニケーション機会が減少する、IT端末のセキュリティリスクなどのデメリットが存在します。
これらのデメリットを解消するための方法として、企業はテレワークを導入する際に下記のポイントを押さえるようにしてください。
勤怠管理の方法を決める
円滑なコミュニケーションが図れる体制を整える
テレワークでの勤務環境を整備する
社内体制(人事評価やセキュリティ対策)の確立
優秀な人材確保や離職率の低下など、さまざまなメリットがあるテレワークですが、社内リソースの問題などで導入できないと悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。
総合人材サービス会社「ヒューマンリソシア」では、出勤からの切り替えを含め、これからの派遣スタッフの働き方として、テレワーク活用を支援しています。
事務系はもちろん、クリエイティブ系、IT技術系など対象となる職種は幅広く、テレワークで必要な機器の貸し出しニーズにも対応可能です。
出社と在宅がミックスされた「ハイブリット型」と、専門スキルを有する人材を全国から確保できる「フルリモート型」を貴社のニーズに合わせて選択でき、企業の人材採用力を高めることができます。
今すぐ派遣スタッフを増員したい、派遣スタッフにテレワークさせるノウハウがない、人材の定着率を上げたいと考えている企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
一般企業でテレワークを導入する際に、必要な準備を詳しくご紹介します。
まずは、普段オフィスで行っている業務範囲から、テレワークに適用できる業務、適用できない業務を精査しましょう。
現時点でテレワーク適用できない業務に関しては、システムの導入で対応可能かどうかも判断します。
例えば、以下のような業務をオフィス外で対応できるシステムが必要になります。
近年は、テレワーク向けのソリューションが充実しているため、業務内容に即したものを選定しましょう。
テレワークの形態は、大きく分けて在宅勤務・モバイルワーク・サテライトオフィスの3種類に分けられます。
それぞれの特徴を理解しつつ、対象社員・対象業務・実施頻度を軸とした選定を行いましょう。
自宅を就業場所とする在宅勤務は、社員の通勤・退勤の負担を軽減できるメリットがあります。
社員に時間のゆとりを与えられるため、ワークライフバランスを整えやすくなり、離職予防に非常に効果的です。
育児や介護をしながら働く社員や、障がいを持つ社員を積極的に雇用している企業に適した形態といえます。
モバイルワークは、顧客先・コワーキングスペース・カフェ・交通機関内(車・電車・飛行機など)を就業場所とする働き方です。
頻繁に外出する営業職などの場合、移動時間を有効活用できるため、生産性向上につながります。
緊急時にも迅速に対応しやすいため、顧客とのコミュニケーションが多く発生する業務に適しています。
サテライトオフィス
本社以外の遠隔勤務用の施設にあたるサテライトオフィスの活用は、職住近接の環境を確保し、通勤時間の削減につながります。
遊休施設や空き家などをリノベーションしたサテライトオフィスも全国各地に置かれており、利用することで地方創生に貢献できます。
サテライトオフィスを就業場所の一つとすることで、全国の求職者を対象とした雇用に対応でき、地方を拠点とした事業拡大にもつなげられるのも大きなメリットです。
在宅勤務でのテレワークを選択した場合、各社員が滞りなく業務を行える通信インフラとITツールを整備しなければなりません。
例えば、在宅勤務では以下の環境を整える必要があります。
機密情報や顧客情報を扱う仕事に関しては、セキュリティ対策を講じる必要もあり、どのようなシステムを導入すべきか検討しなければなりません。
テレワークに必要な機器を導入するにあたり、レンタル業者やリース業者の利用も視野に入れて、通信インフラ・ITツールを整備しましょう。
ここから、基本的なテレワークの導入方法を以下のフローに沿ってご紹介します。
自社が抱える課題をテレワークでどのように解決するかを考え、明確な目標を設定しましょう。
一般企業の多くでは、以下のような目標が設定されています。
テレワークの導入効果を後で測るために、定量的・定性的な成果指標を設けることが大事です。
テレワークの導入にあたり、既存の社内制度の確認は必要不可欠です。
遠隔で働く社員の勤務状況は、オフィスほど明確に把握できないため、管理不足により労働基準法に反してしまう恐れがあります。
就業規則・給与制度・勤怠管理・人事評価制度などを細部まで確認し、必要に応じて変更することを検討しましょう。
テレワークの導入スケジュールをはじめ、対象となる社員や業務などをまとめた計画書を策定しましょう。
【導入計画書の内容】
さらに、機密情報や顧客情報の漏洩防止を目的とした、セキュリティガイドラインも策定します。
セキュリティガイドラインは、情報セキュリティに関する基本方針や行動指針を全社的に統一したものです。
具体的には、テレワークで使用するデバイス・データの保管方法や、ソフトウェア・アプリケーションのインストール条件などをセキュリティガイドラインにまとめ、社員に共有します。
すでにオフィスワークで適用しているセキュリティガイドラインに、テレワーク向けの規定やルールを加え、新たなものを策定しましょう。
最後に、事前に検討していたテレワークに必要なデバイスを導入し、必要なソフトウェア・システム・ITツールをインストールします。
業界・業種によって多種多様なツールが必要となり、インストールやアップデートの管理は、基本的に情報システム担当者が行います。
テレワーク導入の効果測定をするために、タスク管理ツール・勤怠管理ツールの導入は欠かせません。
ウイルス感染や不正アクセスを予防するソフトウェアも予め用意し、万全な体制でテレワークを導入しましょう。