近年の新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、テレワーク(リモートワーク/在宅ワーク)を導入する企業が増えました。
テレワークは通勤費用やオフィスのコスト削減、デジタル化に伴う業務効率改善などの効果が期待できるため、企業だけでなく従業員にとってもメリットがある働き方です。
また、企業のイメージアップや優秀な人材の確保にも有用であるため、導入を検討している企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、テレワークの実施率の現状と導入する際の注意点について解説します。
「テレワークの導入を検討している」「現在の実施率や導入する際の注意点が知りたい」と考えている担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
テレワークのほかにリモートワークや在宅勤務などの名称がありますが、いずれも意味は同じです。本記事では、テレワークという名称で統一しています。
2022年7月22日に内閣府より発表された「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、全国のテレワーク実施率は30.6%です。東京都が50.6%と最も普及しており、地方圏では22.7%となっています。このことから、地域によってテレワークの実施率に大きな差があることがわかります。
ここでは、最新情報を基に企業規模別、業種別、居住地域別の3つに分けてテレワークの実施率を詳しく解説します。
2021年11月1日発表された「第4回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、企業規模別のテレワーク実施率は以下の通りです。
従業員数 |
テレワーク実施率 |
2人~29人 |
20.9% |
30人~299人 |
26.7% |
300人~999人 |
32.4% |
1000人以上 |
46.7% |
上記の表からわかるように、従業員数が多い企業ほど、テレワークの実施率が高くなっている傾向にあります。
従業員数が299人以下の中小企業は、全国平均の30.6%を下回っており、テレワークの実施率が低いことがわかります。大企業のテレワーク実施率が高い理由として、社内体制を整えるための人員とリソースを確保できる点が挙げられます。テレワークを適切に実施するためには、従業員の労働環境の整備や管理体制の構築が必要です。
一方で中小企業の場合は、テレワークで対応できる業務が少ないことや業務の生産性低下への懸念などの理由から、未実施に留まっているケースが多いです。テレワークの実施には、情報セキュリティ対策や通信環境の整備などの課題を乗り越える必要があり、簡単に実施できない実情があることがうかがえます。
2022年7月22日に内閣府より発表された「第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、業種別のテレワーク実施率は以下の通りです。
業種 |
テレワーク実施率 |
情報通信系 |
75.9% |
電気・ガス・水道業 |
46.4% |
製造業 |
40.7% |
対事業所サービス業 |
40.6% |
金融・保険・不動産業 |
39.1% |
卸売業 |
37.7% |
建設業 |
34.2% |
教育、学習支援業 |
30.3% |
公務員 |
26.1% |
対人サービス |
22.3% |
小売業 |
16.2% |
運輸業 | 15.5% |
農林漁業 | 13.2% |
医療、福祉 | 12.4% |
保育関係 | 9.5% |
上記の表からわかるように、情報通信業が最もテレワークの実施率が高いです。情報通信業には、IT関連企業や情報サービス業、インターネット付随サービス業が含まれ、パソコンと通信環境さえあれば働けるケースが多いといえます。
つまり、情報通信業は、働く場所が問われない性質から、テレワークの実施率が高いと考えられます。
一方で、医療や福祉、保育関係などの仕事は、対人でしか行えない業務が多いためテレワークでの対応は難しく、実施率の低下につながっているといえるでしょう。
このように、業種によってテレワークで対応できる仕事とできない仕事がはっきり分かれるため、実施率に大きな差が出ています。
2022年3月に国土交通省によって発表された「令和3年度テレワーク人口実態調査」によると、居住地域別のテレワーク実施率は以下の通りです。
居住地域 |
テレワーク実施率 |
首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県) |
42.1% |
中京圏(愛知県、岐阜県、三重県) |
23.0% |
近畿圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県) |
27.3% |
地方都市圏(上記以外の道県) |
17.7% |
上記の表からわかるように、首都圏が最もテレワークの実施率が高く、地方と大きな差があります。都市部と地方で実施率に差が出る理由としては、企業規模が関係していると考えられます。
大企業は都市部に集まっている場合が多く、地方は中小企業が大きい割合を占めているため、テレワークの実施率に差が出ていると考えられます。
テレワークの導入は、従業員の仕事へのモチベーション向上、企業のイメージアップなどのメリットを生む可能性があります。ヒューマンリソシアが実施した「派遣スタッフのテレワークに関する調査」でも、テレワーク実施者のうち63.0%が、仕事のモチベーションが「上がった」と回答しています。
しかし、メリットがあるからといって、むやみに導入してはかえってリスクとなるケースも想定されます。リスクを回避するためには事前に社内で十分に検討を行い、どういった課題があるのか把握することが大切です。
ここでは、企業が直面する代表的な課題を5つ紹介します。
テレワークは、単に従業員を職場以外の場所に配置すれば済むものではありません。テレワークの導入には環境や機器などの整備が必要な場合が多く、予想していないコストがかかる可能性があります。
従業員が自宅で使用するパソコンや通信環境、情報セキュリティ対策などのシステムは最低限必要であり導入コストは避けられません。導入コストがかかったとしてもランニングコストは安くなる可能性があるため、検討の余地はあるといえるでしょう。
テレワークは、従業員が見えない場所で働く性質上、始業や就業、休憩時間などの管理が難しくなります。勤怠管理が行き届いていない場合は、長時間労働につながる危険性もあるため注意が必要です。現在は、テレワーク環境でも利用できる勤怠管理システムがあります。従業員の労働時間を正確に把握し、時間外労働や違法な残業が発生しないように注意することが大切です。
すべての業務がテレワークに向いているわけではありません。業種によっては、テレワークでは対応できないケースがあります。医療や福祉、運輸業などは直接現場に行ったり利用者と接したりする必要がある業務が多いため、テレワークに移行することは困難です。
テレワークの導入を検討する際は、向いている業務を的確に選定し、一部をテレワークに移行する選択肢もあります。
テレワークを導入する際、セキュリティ上のリスクが懸念されます。テレワークをする従業員は、自宅で働くことが多いです。個人で高度なセキュリティシステムを導入しているケースは少ないため、情報漏洩のリスクがあります。
情報漏洩は企業だけでなく従業員にとっても損失となる可能性があるため、リスクを回避するためには企業側で従業員の労働環境を整備する必要があります。
テレワークを導入したことで、業務効率が低下したという声も少なくありません。理由としては、コミュニケーションが円滑に取れないことや、業務フローがテレワークに向いていないことが挙げられます。
しかし、適切に対策することでこれらの課題を解決することが可能です。
従業員間でスムーズにコミュニケーションが取れるツールの活用や、業務フローの見直しを行うことで、従業員の負担を減らし業務効率の向上を図れます。
現在の日本のテレワーク実施率からもわかるように、テレワークは容易に導入できるものではありません。しかし、企業で適切な取り組みを行うことでテレワークを導入しやすくなります。ここでは、テレワークの実施率を上げるための対策を3つ紹介します。
テレワークはオフィスでの働き方とは異なる点が多いため、テレワーク専用の社内ルールや就業規則の整備が必要です。理由として、オフィス勤務時と同じ就業規則で運用した場合、テレワークと合わない部分が出てくるからです。
就業規則だけでなく、評価方法も見直す必要がありテレワークに適した考え方と運用体制を整えることが大切です。
テレワークを導入するためには、書類のペーパーレス化(デジタル化)が効果的です。
テレワークをする従業員は職場にはいないため、書類のやりとりは困難です。決裁が必要な書類を紙ベースでやり取りしていてはテレワークの意味がありません。ペーパーレス化が容易な業務から少しずつ書類のデジタル化を進め、テレワークが実施しやすい環境の整備が大切です。
社内のみで完結する書類であれば、企業の判断でペーパーレス化できます。業務フローを見直し不要な書類を廃止することで、業務の効率化につながります。ペーパーレス化は、第三者による改ざんの防止になり、紙ベースの書類のように破損や紛失の心配もありません。
テレワークを運用するうえで問題となるのが、コミュニケーションです。ツールを導入することで、コミュニケーションの課題の多くは解決できます。
オンライン会議システムやビジネスチャットツールが効果的です。オンライン会議システムは、文字だけのやり取りでは伝わりにくい場合や、チームの定例会議などで活躍します。お互いの顔を見ながら会話ができるため、意思疎通がしやすく、コミュニケーションエラーを防止できます。
ビジネスチャットツールは、ちょっとしたやり取りに有用であり、出退勤のサイン代わりに使用されるケースもあります。
通常のメールとは異なり、ダイレクトに本題に入れるため、コミュニケーションの円滑化につながります。
この記事では、テレワークの実施率について、実情や課題について詳しく解説しました。
企業でテレワークを実施する際は、企業と従業員にとってのメリットだけでなく、従来の業務をどのように変えればテレワークが可能になるか考えることが大切です。
業種による実施率の違いからもわかるように、現在テレワークで対応できる仕事は多くはありません。
テレワークの定義はICTを活用した柔軟な働き方であり、働き方改革の一環でもあります。今後は一部の従業員だけでなく、幅広く利用できる取り組みにしていくことが重要です。
テレワークを導入する目的を明確にし、目的に向けた準備を進めることで、企業と従業員にとって大きなメリットとなるでしょう。
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